院内誌「うるおい」
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第30号 ご挨拶 (2006年・冬)
新年あけましておめでとうございます。
今年も皆様がご健康でありますように。
さて、今年もインフルエンザ流行の季節が来ましたが、かなりの方がインフルエンザワクチン接種をされたと存じます。しかし、患者さんの中にはにインフルエンザと一般の「風邪」とを混同されている方がおられます。ワクチンの接種をしたのに「風邪」を引いたといわれる患者さんですが、インフルエンザワクチンはあくまで過去に流行したもので、その年にそのインフルエンザウィルスに一致してはじめて有効です。しかし、予測は不可能ですのでワクチンをとにかく接種しておくことは何より大切です。
さて、問題となっているH5N1型の「鳥インフルエンザ」がヒトに感染性を持ってヒト同士で感染が起きた場合は全く事情が異なり今のワクチンは無効です。新しいワクチン開発が必要ですが流行に間に合いません。この場合はマスコミでも報じられているように大流行がおきます。しかし、幸いにも2001年より「タミフル」が発売されてから治療率は劇的に向上しました。私の感想では昨年はB型では以前より効果は落ちていますが、感染性が強くて流行して重症化するのはA型ですので、とにかく症状が出ればタミフルを早期に5日間内服することです。また、内服するだけでなく、安静と休養・睡眠は基本的に抵抗力を高める必要最低限のことです。細菌感染を合併して気管支炎・肺炎のときは抗生剤を併用しますが、一般的には無用な注射は事故のもとですので注意したいものです。
第29号 ご挨拶 (2005年・秋)
今回はタバコの話しをしましょう。
日本は先進国の中で特に若年喫煙者が増加し、他国の喫煙者減少施策にはほど遠く世界の潮流に逆行している特異な国です。欧米豪州などの先進国やタイ、シンガポールなどの国はタバコ広告を規制しタバコの有害性を周知させ、世界的には喫煙人口は減少を続けています。
しかし、日本ではなお、3千3百万人以上の人が喫煙者です。WHOは日本のタバコ輸入量が世界最大に達したと発表、男性の喫煙率は49.9%と、先進七カ国の中で群を抜いて高く、一方、女性の喫煙率は13.2%と一見低い数字のようですが、20代の若者、特に女性の喫煙者は増加を続け、20代男性では人口の63%、20代女性では人口の22%の方が毎日タバコを吸つているのです。都市部の若い女性の喫煙率は40%と推定されます。若年層では、今や日本の男性の喫煙率と並んで世界一です。街にはタバコ自動販売機があふれ、歩いて数分おきにタバコの自販機を見る都市は世界にありません。
世界各国政府は法律により積極的にタバコ規制を実行しています。ブータンはタバコの販売を一切禁止し国中を全面禁煙にすることに決定し、イタリアでは禁煙条例により公共施設および飲食店が全面禁煙となりました。高額罰金制度を導入し周囲に子どもや妊婦がいた場合は罰金額は倍額されます。
タバコを「個人の趣味趣向品」と考えはいけません。タバコは肺のみならず、のど・舌・食道・口腔底・膀胱などあらゆる臓器の発ガン物質です。胎児の発達障害・肺気腫や慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患を生じて、呼吸困難から在宅酸素さらに肺感染症により死に至ります。
禁煙の方法は「一気にゼロにすること」です。その後の「吸いたい」心理的禁断症状は数分で収まります。その時に決して、禁煙パイポ・ガム等々の「口唇」に関わる行動をしてはいけません。全く別の行動をするのです。
第28号 ご挨拶 (2005年・春)
暖かくなってきました、皆さんお元気でしょうか。
さて、今回は薬の後発薬(ジェネリック)についてお話しましょう。後発薬とは先発薬(新薬)の特許が切れて、薬の薬効成分が全く同じで、しかも薬価がかなり安くなった薬のことです。
これを使えば皆さんの「薬代が半額になる」という本もありますが、これは少し言い過ぎかと思います。その理由は色々あるのですが、特許の切れた薬を使う時点ではもっと優れた、副作用の少ない新薬が出ていることが多く、わざわざ副作用が出るのに後発薬を使用することは決して好ましいことではないからです。多くの血圧の薬がそれに当たります。
また、後発薬では効かないが新薬で効くようになった代表が一部の高脂血症の薬などです。さらに薬効成分が同じでも、賦形剤(ふけいざい)といって主成分に付け加えた物質は後発薬では劣り、しかも不純物が多いことがあります。全く味が異なったり、夏にカプセルが溶けることもままあるのです。
ですから安い薬を使えばいいというものではありません。それにまだ特許が切れていない新薬も多いこともよく理解してください。インフルエンザの薬も高価ですが、これは発売してから四年しか経過してません。当院ではそれらを厳重に吟味して後発薬を選んでいます。ですから当院では安全に後発薬を使用できるものは出来うる限り後発薬にして薬代を安くしているつもりです。
しかし、日本では厚生労働省が決める新薬の薬価そのものが欧米より高いのです。私はこれを改めて欲しいと思います。
余談ですが、医療機関が高い薬(先発薬)、安い薬(後発薬)どちらを使っても、薬代で医療機関に利益がでることはまずありません。時代が変わっているのです。
第27号 ご挨拶 (2005年・冬)
新年あけましておめでとうございます。
と言いたいところですが、昨年の洪水によって被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興をお祈り申し上げます。そして今年も皆様がご健康でありますように、また今年こそ災害のない平和な日々でありたいものです。
今年は八鹿病院も新築され、ますます当院と病院・他の診療所との連携が重視されるようになってきました。いつも申し上げていることですが、当院は患者さんを「全体像」として診せて戴いております。
つまり、臓器別に専門的ばかり診ないことにしています。もちろん循環器・消化器などにはそれなりの高度の機器もありますが、人間は一つです。専門外来ばかり受診しますと、その外来ごとに薬が出て結局は沢山の薬を飲むことになりますが、これは最近よくあることですね。
かかりつけ医が全体のバランスを考えて処方すればそのようなことは防ぐことができます。それが医学が進歩するなかで逆に大切なことだと思っております。
当院での薬は保険薬局に行く必要がありません。したがって合わない薬とか、薬の変更は容易ですし、薬の説明も医師と薬剤師とが密接に連携して皆様の健康管理ができます。これが当院の別の特徴でもあります。そのような基本的理念を今年も大切にしながらスタッフ一同一丸となって患者様のお世話をさせて戴きたく存じます。
今年も宜しくお願い申し上げます。
第26号 ご挨拶 (2004年・秋)
今年は「から梅雨」の上に猛暑で大変でしたね。夏ばてしそうですが皆様お元気でしょうか。
さて、皆さんは最近「院外薬局」という言葉を聞かれることがありませんか。これは病院や診療所で薬を出すことをやめて、かわりに「院外処方箋」を発行して、院外処方箋を受け付ける「保険薬局」に患者さんが出向いて薬をもらうことです。これを「医薬分業」というのですが、欧米ではこれはあたりまえのこととなっています。
日本、特に但馬では普及しませんでしたが最近増えつつあります。患者さんにとってよいところは薬剤師に薬剤情報の提供や指導をしてもらう利点がありますが、これは薬剤師をおいていない医療機関では有益ですが、当院は開院時から薬剤師がおりますし薬剤情報も提供していますので、この点では何の変わりもないのです。逆に不都合な点は、まず患者さんの合計の支払い負担は増加します。これは薬局での薬代以外の様々な別料金と院外処方箋料の合算だからです。それに、もう一度別の建物に行くのは面倒なことです。薬の追加とか、合わない薬の変更についても融通が利きにくいですよね。特に、但馬のように雨や雪の多いところではお年寄りには不便なのかもしれません。どちらがいいとも悪いともいえないのですが、当院ではこれから皆様のご意見などを是非聴かして戴きたいと存じております。
第25号 ご挨拶 (2004年・春)
春から初夏へと気候のよい季節となりました。
皆様、お元気でしょうか。
当院も今年の五月で満12歳となりました。この間に来院してカルテ登録されました患者さんは13,000名にもなります。当院は「総合診療科」として内科を中心に多くの患者さんを診させて戴いております。消化器でいえば腹部エコーで11,000件以上、胃カメラで5,500件以上の検査をしており、多くの疾患が発見・治療されております。循環器でも心電図で14,000件以上、その他心臓エコーや24時間心電図にて多くの心疾患の診断と治療ができております。また、病院と当院、或いは別の診療所と当院との連携は密に保たれており、この12年間に書かせて戴いた「紹介状」(診療情報提供書)は6,500件にもなり、入院治療・精密検査・緊急手術などに役立たせて戴いております。さらには「地域ケアセンター」との連携も重視し、当院から訪問看護の指示を行うことによってデイサービスや老健入所、さらには入院が円滑に行われるように配慮されております。これらの体制は今後も変えることなく患者さんのより良い医療に反映させて行きたいと存じます。
さて最近、高血圧症・高脂血症・糖尿病は増える一方ですが、特に糖尿病は増加の一途をとっております。ここで糖尿病検査の意味を少し付け加えさせて戴きます。血糖は食前・食後でいつも変化しておりますので多少の増減で一喜一憂することはございません。糖尿病全体の流れがどうであるかはA1C(エイ・ワン・シー)を指標にします。この数字が高いほどコントロールが悪いことになります。詳しくは裏表紙に表にしておきましたのでご参考にしてください。良い季節ですので屋外でしっかりと運動をしましょう。
第24号 ご挨拶 (2004年・1月)
新年あけましておめでとうございます。
今年も皆様がご健康でありますように。
さて、今年もインフルエンザ流行の季節が来ましたが、かなりの方がインフルエンザワクチン接種をされたと存じます。しかし、患者さんの中にはにインフルエンザと一般の「風邪」とを混同されている方がまれにおられます。ワクチンの接種をしたのに「風邪」を引いたといわれる患者さんですが、インフルエンザワクチンはあくまで「インフルエンザ」に有効です。「風邪」をおこす病原体は他にいくらでもあるのです。さらにはその年に流行したインフルエンザの種類によってワクチンがごく少数ですが効かなかった例も昨年はございました。是非、そのような認識を持って戴きたいと存じます。
さて、診療時間帯の若干の変更がございます。午後診は4時頃開始して6時には「受け付け終了」しますのでご了承くださいませ。また、学会・研修によって臨時休診することもございます。以上、宜しくお願い申し上げます。
第23号 ご挨拶 (2003年・秋)
昨年はインフルエンザが大流行した上に薬がなく大変でした。インフルエンザは細菌(バイ菌)ではなくウィルス(ビールス)によっておこる感染症です。したがってバイ菌に効く抗生物質もインフルエンザには全く効果がありません。したがって予防接種が一番良い方法です。
しかし,最近はインフルエンザに効く薬があります。「タミフル」というA型にもB型にも効く内服のお薬があります。「シンメトレル」という内服薬もありますがA型にしか効きません。またA型にもB型にも効く吸入薬「リレンザ」もあります。しかし、安静にして十分な休養と睡眠、栄表が一番の治療です。薬を飲みながら仕事を無理してはちっともよくなりません。
よく「注射で一発で直してくれ」とおっしゃる患者さんがおられますが、今まで述べた理由からあまり効果のないことがおわかりかと思います。ただし、下痢や嘔吐または熱で食欲のない方には補液という意昧で点滴をして治療をすることは度々ありますし、肺炎を合併すればためらうことなく抗生剤の注射はいたします。この点をよく理解していただきまして、注射による医療事故のないようにお互いに注意したいものです。
風邪を引くと熱が出るのは体の生体反応です。これによって、バイ菌やウィルスの増殖が抑えられるため解熱剤はよくないという説もあり、またバッファリン内服は小児でライ症候群という脳症をおこすことがあります。バッファリンとウィルスとは相性がよくありません。当院は「アセトアミノフェン」という安全な解熱剤を使用しています。
第22号 ご挨拶 (2003年・5月)
今年はインフルエンザが大流行した上に花粉症もひどくて大変でしたね。
また、社会保険本人の自己負担増加も社会的議論の多いことです。なるべく薬を少なくしてこれに対応すべく努力いたします。
これからの季節は比較的安定した時期ですが、今回は二つ問題に触れておきたいと思います。一つは、患者さんからよく聞かれる質問の中で「補助健康食品」を取り上げたいと思います。よく「この健康食品は効くのでしょうか? 今飲んでいる薬と飲み合わせが悪くなりませんか?」とか、人気テレビ番組の健康情報についてもよく質問されます。皆さんが実に多くの健康食品を試されていることに驚かされます。それ自体が決して悪いとはいえないのですが、「医薬品」ではないので医師として責任を持ってお答えしにくいのが現状です。ただいえることは、人間すべてに一様に有効な食品はないのではないかといえます。一般に健康によい食品であるからといって、ある病気を持っておられる患者さん一人一人にそれが通用するかは全く別の問題なのです。この点は漢方医学とかアーユルベーダ医学などの方が参考になります。各人体質が異なるのですから、それにあった補助食品が望ましいのです。
もう一つは、これから暑くなったときの「脱水症」「熱中症」「日射病」です。とくに農業をされている高齢者の方と運動クラブに所属している学生さんが問題となります。よく「冷たい水」のみを摂られる方がおられますが、これはよくないです。人間は太古の昔「海」から生命として誕生しています。したがって体液も「塩分」を含んでいますから、補充するにはどうしても塩分の補給も同時に行って欲しいのです。最近は多くのスポーツ飲料が販売されていますので自分に合ったものを選んでください。そして、あまり冷たいものを摂りすぎないことも大切です。これについては詳しいパンフレットを用意しております。
第21号 ご挨拶 (2003年・1月)
新年、明けましておめでとうございます。
今年も皆様がご健康でありますように・・。
さて、今年の四月には社会保険の三割負担という医療「改悪」が行われます。国家財政の破綻を患者さんの医療負担の増加で補おうとするのは残念ですね。
日本の医療は心臓移植を代表とする「高度医療」と、社会構造の急速な変化に伴う「精神的・心理的負担」を解決しようとする「全人的医療」とに分化しています。つまり、膨大なお金を使って世界的長寿国家にはなりましたが、それに対する社会的・心理的基盤は極めて不十分です。私はいつも思うのですが人間は臓器という部品の組合せではなく精神も含めて「全体的・一体的」存在だと思うのです。ですから、人間はいくら高価な医療機器を駆使しても解決できない問題にいつも直面してゆきます。そこで「全人的医療」が必要なのです。ここが専門医と一般医との違いです。米国では一般医の方が社会的地位を大切にされます。一般医の方が幅広い専門的知識も要求されるからです。
当院は「総合診療」が開院当初からの目標です。総合診療は詳しい問診と診察から始まるのであり検査からではありません。当院は様々な医療機器や高性能のコンピュータもそろえていますが、それもあくまで「全人的医療」のための手段です。当院では患者さんにできるだけのことをして、必要となれば特定病院・専門病院・専門的診療所にご紹介しますが、それも総合診療医の大事な役目です。当院の医療の原点はなんら変わりません。それを毎年新年を迎える当院の戒めとしたいです。他の医療機関との連携も大切にしながらスタッフ一同、気を引き締めて仕事を行ないたいと存じますので今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。