脳梗塞

 最近脳卒中研究者の間で、「脳卒中の軽症化」というようなことがささやかれています。一昔前の戦争中に比べ、最近の脳卒中では、脳梗塞が1割くらい増えて、その分脳出血、くも膜下出血などの生命にかかわる脳卒中のタイプが減ってきたといわれています。最近の脳卒中の中で、主役の役割を占めてきた脳梗塞というのはどんな病気でしょうか。

 脳梗塞というのは、脳に血液を送っている動脈の内腔がつまり、その先に血液が流れなくなるために、その先の脳の組織が死んでしまう状態をいいます。脳梗塞には、脳血栓と脳塞栓の二種類があります。

 脳血栓は、動脈硬化のために脳動脈の内径が極めて狭くなったり、動脈硬化を起こした部分が痙攣収縮して血液が固まりやすくなり、血栓が生じてつまってしまう場合をいいます。

 脳塞栓は、脳動脈以外の部位や太い内頸動脈などに生じた血栓などがはがれ、血液の流れにのって脳の末梢の動脈まで運ばれ、そこで脳動脈の閉塞を起こした場合をいいます。

 脳卒中の軽症化ということは、患者の生命延長につながりよいことではあるのですが、一方では、高齢化の脳梗塞後遺症として寝たきりの患者の増大を促しています。

 脳梗塞は、急性期を乗り越えて死にいたらず、延命するケースが増えているわけです。そこで重要なことは、脳梗塞の再発を起こさせず、さらに日常生活能力も落とさないようにアフターケアをしっかりとしなければいけないわけです。

 脳梗塞が再発した場合には、寝たきりになったり、あるいは死亡につながるケースが非常に多いのです。脳梗塞を経験した患者さんが再発作しないためには、血圧管理がいちばん大事だといわれていますが、これが最も難しいというのが現状です。現在医学界などで指摘されているのは、脳梗塞経験者の患者の血圧値に関しては、ゆっくりと数ヵ月かけて、目標の血圧値に持って行くのがよいとされています。もちろん自己判断は禁物で、主治医と十分に相談すべきです。

 

脳卒中患者の退院後の行動範囲