胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍とは

潰瘍とは粘膜筋板を越えて組織が欠損した状態であり、組織の欠損が粘膜層内にと どまるものを、びらんといいます。

 


原因は

バランス説
 胃酸、ペプシン(タンパク分解酵素)など胃の組織を攻撃する因子と、胃粘膜血流、 胃粘液など胃の組織を防御する因子の両方の均衡が破綻したときに潰瘍が発生する と考えられます。

環境因子
 喫煙は胃酸分泌を亢進させることに加え、胃粘膜血流量を減少させ、潰瘍に対して は悪影響のみをもたらします。またストレスも小さな血管の血の循環が悪くなり、 潰瘍が発生しやすくなります。

遺伝因子
 近親者に胃・十二指腸潰瘍のいる方は、潰瘍の罹患率が高いといわれています。

細菌感染
 ヘリコバクターピロリという細菌が、胃・十二指腸潰瘍の発生および再発因子とし て注目されています。

 


症状は

腹痛
 部位:みぞおち
 性状:焼けるような(胃酸による)、さし込むような、うずくような、
    重たい感じなど種々
 時間的関係:数日ないし数週間続きます。胃潰瘍では食後、十二指腸潰瘍では夜間
       や空腹時の痛みが特徴的です。

吐き気、嘔吐、腹部不快感、食欲不振など。

潰瘍から出血した場合には血を吐いたり(吐血)、便が黒くなります(下血)。

 


検査は

バリウムによる胃X線検査。
 潰瘍の部位にバリウムが貯まり、白く見えます。

内視鏡検査により診断します。

 


潰瘍の経過

このような経過をとり、あるものは再発を繰り返します。
 1.活動期
  A1:潰瘍底の出血、辺縁の浮腫
  A2:辺縁の浮腫消失・滑らか
 2.治癒過程期
  H1:潰瘍は縮小、再生粘膜の出現
  H2:潰瘍周囲のひだの集中、再生粘膜強い
 3.瘢痕期
  S1:赤色瘢痕
  S2:白色瘢痕

 


合併症は

消化管出血(潰瘍の部分の血管から出血して、吐血、下血を生じます)。

穿孔(胃・十二指腸に穴があいたとき)の場合は穿孔性腹膜炎を起こします。

幽門狭窄(胃・十二指腸潰瘍がひきつれて治癒した場合に胃の出口が狭くなり、  食物が通りにくくなります。とくに十二指腸潰瘍に多い)。

 


日常生活での注意点は
嗜好品は?
喫煙、飲酒は適量に。
コーヒーはひかえめに。 食事の際の注意は?
規則正しい食生活を。
暴飲・暴食を避ける。
香辛料の強い食品を避ける。
ゆっくりよくかんで。 精神面での注意は?
仕事上・家庭内のストレスを除く。
過労を避け規則正しい生活を。

 


治療は

出血・穿孔・幽門狭窄などの合併症がある場合は、入院が必要となります。また出 血に対しては、内視鏡を使って、直接出血点に注射をして出血を止めることが可能 です。

薬物療法としては制酸薬(胃酸を中和する)、胃酸分泌を抑制する薬剤と胃・十二 指腸の粘膜を保護する薬剤を投与します。潰瘍が治癒しても、しばらくの間は再発 を起こしやすいので医師の指示があるまできちんと薬をのみ続けましょう。

外科的治療は、潰瘍からの出血が内科的にコントロールできない場合や穿孔に加え て幽門狭窄が生じた場合に行います。内科的治療に抵抗して潰瘍が治癒しない場合 や再発を繰り返す場合は外科的治療を行うことがあります。

 


予後は

胃・十二指腸潰瘍は胃酸分泌抑制薬により6〜8週間で約80〜90%が治癒し、 合併症を起こさなければ生命予後はよい疾患です。しかし胃・十二指腸潰瘍は再発 を繰り返しやすい運命を持っています。再発を繰り返さないためには薬物療法にの み頼るのでなく、日常生活の注意も必要となります。またヘリコパクターピロリと いう細菌を胃粘膜から消失させることにより、潰瘍の再発率を低下させると考えら れています。

胃・十二指腸潰瘍は胃や十二指腸の局所的な疾患としてではなく、潰瘍という全身 的な疾患として捉える必要があります。